二次元裏@ふたば

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544702 B21/04/12(月)01:54:57No.792029770そうだねx6 06:32頃消えます
「マヤ、わかっちゃった」
 その言葉が恐ろしく思えるようになったのは何時からだろう。先日の春の天皇賞か、それともクラシック時代での有馬記念優勝の時か?
 いや違う。どれも違う。これまではその稚気に微笑ましさと愛らしさを覚えていた。無論、数日前にトレーナー室でマヤノと談笑した時だって何一つとして変わったところは無かった。天才的な洞察力に裏打ちされた閃きの力は、私に幾ばくかの焦りとそれを上回る期待と喜びをもたらしてくれた。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
121/04/12(月)01:55:20No.792029829そうだねx4
「こうしちゃえばトレーナーちゃんは動けなくて……それで……」
 マヤノが分かったことを私が理解して、試して成功して二人で手を合わせる。喜べはすれど、怖がるようなものでは決してない。そう分かっていたはずなのに今は、そう今は、ひたすらに別の感情だけが私の心を支配する。
「トレーナーちゃんの弱いとこは……」
 頬から首筋、鎖骨をわたってシャツの中の胸元へ。つうっと滑る細く滑らかで少し冷たい彼女の指先に、私の身体は勝手に反応しびくんと跳ねる。
「あっ、やっ……マヤ、どうし、て……」
 口から出ていく言葉の全てが困惑に歪む。私が今できることはマヤノが何故こんなことをしたかを知る、ただそれだけだろう。
 助けを呼んだところで無駄なのは分かっている。窓もドアも完全に閉め切られているのだから、叫んだところで部屋の外になど聞こえるわけもない。加えて、まだ昼前だと言うのに安物の遮光カーテンが引かれ薄闇が立ち込めているのだから、そもそも室内に居ることすら分かりようもないだろう。
221/04/12(月)01:55:51No.792029928そうだねx3
問いかけに答える声はなく、代わりにぱちりとフロントホックの外れる響きが肌に伝わる。肌を歩いた、冷たかった指先が温もりの分かる手のひらに変わる。いくら見栄を張っても大きいとは言えない乳房がマヤノの手のひらに覆われる。
「やっぱりここが弱いんだね。トレーナーちゃん、かわいい」
「ねえ、なんで、どうして、なの……」
 私の目に熱いものが込み上げてくる。いつもなら腕や指で拭いされるそれは、今の私にはどうすることも出来ない。
 だって気付かなかったし思いもよらなかったのだ。かねてより私とパジャマパーティーがしたいと言っていたマヤノの願いを聞く形で自室に呼び就寝し、お菓子をつまみながら楽しく談笑したその翌朝。まさかベッドに手錠で拘束され、キャミソール姿のマヤノにウマ乗りになられるなどとは。
「えー、なんでって何が?」 
 悲しげな微笑みを絶やさぬまま、マヤノは不思議そうに首をかしげた。
「どうしてって、トレーナーちゃんならわかるでしょ?」
321/04/12(月)01:56:34No.792030077そうだねx3
マヤノが投げた「わかるでしょ」。自分の胸に聞けと言わんばかりの台詞だが、ことマヤノに限ってはそれだけの意味ではない。それぐらいトレーナーをしてきた私なら分かるのに、口から出るのはどうして、なんでの繰り返しだ。
「……トレーナーちゃん」
「あっ……!」
 私のうわ言を断ち切るように胸元の手が動き出す。整えられた爪先で乳首をかりかりと擦られる。マヤノの言葉に怒りはない。
 答えなきゃずっとこのままだよ。そう耳元で囁かれ、私は必死にマヤノとの思い出を脳内へと求めた。
421/04/12(月)01:57:31No.792030244そうだねx3
 恋という経験は私にはない。でも『それこそ』が、女を変質させるものであることぐらいは知っている。
 だからこそ、あの時の私が述べたすべては、大人としての正しい選択だったと断言できる。でもそここそが分水嶺で、歯止めが利かなくなってしまう理由そのものだったのだ。
 だから、理由なんてあれしか、ない。
 ひどく最近の思い出に手を伸ばして、私はゆっくりとあの時の私を巻き戻していく。 
521/04/12(月)01:58:11No.792030353そうだねx5
「だめだよ、マヤは、女の子、なんだ、から」
「うん」
 自分の耳と髪を撫で続けていたマヤノの手が、そっと私の喉元に寄り添う。力は一切込められていない、なのに何故だか息が詰まる、喉が痛い、苦しい、死んでしまいそうになる。それでも私は言葉を紡ぎ続ける。途切れ途切れに、思い出す。あの夕暮れの、いつになく真剣で、いつになく心細そうなマヤノの告白を。
「わたし、なんかより、もっとすごくて、かっこいい、いいひとが、いいひとにであえる、から」
 そこまで言いきってからマヤノの顔を見つめた。潤んだ瞳、上気した頬、悲しげに下がった眉。何もかもがあの日と変わらない彼女の顔がそこにあった。
「うん。でもマヤね、トレーナーちゃんが……ううん、トレーナーが、好き。きっとこれから誰と走っても、変わんないぐらい本当に好き。断られても、変わんない。だから、今日いっぱいでぜんぶ、さよなら。そうしようって決めたの」
 マヤ、大人でかっこいいでしょ? そうおどけてみせたマヤノの頬を、カーテンから漏れ出た光が照らした。涙の筋、煌めく雫、力なく落ちて私のシャツにか細い足跡を残す。
621/04/12(月)01:58:48No.792030471そうだねx3
「なんでだろ、ねえなんでなのかな。トレーナーちゃん、マヤなんでも分かるのにね、どうしてもわかんないの。こんなに辛いのはなんでだろう、教えて、おねがい、おしえてよ……」
「……マヤ」
「マヤ、男の子だったらよかったのかな。それともトレーナーちゃんが男の人だったらよかったのかな。……そうじゃないよね、わかってる。わかってるから、決めたんだもん」
 マヤノが少しずつ身を屈めていく。私のもとへ、私の身体へ
 ああ、私は。
「トレーナーちゃんがマヤのものにならないのなら」
 静かな涙を流しながら、マヤノはそっと私の頬へと顔を寄せた。そして、鼻をすする音を二度三度鳴らした後、喉元を押さえていた手で私の顎をくいと持ち上げる。
「私が、もらうね」
721/04/12(月)01:59:14No.792030543そうだねx3
 私はどこかで何かを誤ってしまったのだろうか。ぽたぽたと私の頬に降り注ぐマヤノの涙を、降らせないまま終わらせることは出来なかったのだろうか。後悔に滲んで纏まらない思考は、舌と舌が縺れ合う感触にとって変わられ、私の瞳を意図もせず蕩けさせていく。痛く、苦しく、涙が出るのに、何故だかひどく甘い。強張った筋肉が弛緩していく。彼女を受け入れようとゆっくり、ゆっくり身体が溶けていく。
 もう、私は戻れない。
 さよなら、マヤ。ごめんね、マヤ。
 今まで本当にありがとう。
 声にならない想いが午前十時の私を包み、目尻から溢れた一筋の涙と共に私とマヤノを別の世界へと連れていく。
 ひどくおざなりで乱暴なフレンチ・キスには、涙が出るだけの理由が必ず潜んでいる。ああ、私が分かったことなんて、結局たったそれだけのことだ。
821/04/12(月)02:06:29No.792031754+
ドキドキした…
921/04/12(月)02:08:27No.792032069そうだねx3
マヤノ×マヤノトレーナーチャン(♀)増えてきたな…
1021/04/12(月)02:08:28No.792032073+
ヤミノトップガン…
1121/04/12(月)02:18:12No.792033615+
レズぴょいされてるー!
1221/04/12(月)02:21:01No.792034024+
どうしたら幸せに…ううん、不幸にならずに済んだんだろう
1321/04/12(月)02:24:20No.792034500そうだねx8
『女の子』扱いじゃなくて、『マヤ』として断られたらきっとこうはならなかったかなって…
1421/04/12(月)02:31:18No.792035487そうだねx1
目覚まし時計はもう鳴らない
1521/04/12(月)02:37:18No.792036238+
姉貴も見習え
1621/04/12(月)02:40:46No.792036673そうだねx1
ウマ娘のお股にはウマ並みのウマ息子が付いてる設定にしとけばこんな悲劇は起きなかったんだ
1721/04/12(月)02:48:41No.792037572+
女の子だけど雄だから…
1821/04/12(月)03:07:38No.792039469+
マヤトレは文学
1921/04/12(月)03:16:39No.792040198+
このあまりにも倒錯した関係は破滅の美を感じさせる
2021/04/12(月)03:20:22No.792040498+
ウマソウルが牡な子は女の人に惚れてもおかしくないのかもしれないとふと思った
2121/04/12(月)03:21:15No.792040567+
誰も幸せにならないのいいよねよくない…でも好き
2221/04/12(月)03:42:49No.792042030そうだねx2
二輪の百合が手折られていく関係は私の性癖に合っていますよ
2321/04/12(月)03:51:43No.792042591+
トレーナーちゃんはこの後どうなるの
失踪するの
2421/04/12(月)03:54:14No.792042749+
深夜に変なの書いて寝れなくなったからちょっとだけうまぴょいな蛇足の続き書いちゃったよ
いらなかったらなんかパラレルとして処理してね
2521/04/12(月)04:02:07No.792043230そうだねx2
>深夜に変なの書いて寝れなくなったからちょっとだけうまぴょいな蛇足の続き書いちゃったよ
>いらなかったらなんかパラレルとして処理してね
こういう退廃的な怪文書はとても好みなので次の機会があれば書いていただきたいです
2621/04/12(月)04:05:15No.792043416そうだねx1
 あれからもう数ヶ月が経った。結果だけを言えば私たちはURAを優勝し、文字通り有終の美を飾ることが出来た。そこに行き着くまで決して短くはない期間であったが、マヤノとの付き合い方になにか変化があったかと言えば、そこまで特筆したことは無かったと言うより他に無いだろう。
 マヤノは翌日のトレーニングに当然のような顔で、いつも通りの雰囲気を纏って私の前に現れた。十把一絡げの凡人である私は当然のように戸惑い、悩んだ。マヤノをここまで変質させてしまった自分の罪を認めて、今すぐトレーナーを辞するべきかどうかを。しかし、今この大事なタイミングで一悶着起こすのはマヤノの未来をこれまで以上に奪うことと同義であった。
 故に、指導をしながら心の片隅で、一昼夜悩みに悩み抜いて、せめてマヤノを導くことだけはしようと決断した。マヤノにそう伝えると、嬉しそうに「良かった」と呟いていたから、そこに帰結できたことだけは間違いではなかったと信じたい。
2721/04/12(月)04:05:42No.792043447そうだねx1
 あの朝以降マヤノは非常にからっとした笑顔ばかりを見せるようになった。そして、私へのストレートな好意や好奇心に彩られたデートの誘いなどを一切口にしなくなった。
 しかし、マヤノのモチベーションは下がることを知らず、寧ろ前よりも熱心にトレーニングにレースにと打ち込むようになった。ただ時折、「わかってたはずなのにな」と寂しげに呟くことだけが、心残りではあったのだが。
 今は、いつかの福引きで手にした温泉への旅行券で、彼女の労いも含めて湯治に来ている。温泉に浸かり、豪勢な晩御飯を食べ、枕を並べて寝ようとしたとき、マヤノがゆっくりと、何か聞き覚えのあるような熱っぽい溜め息と共に口を開いた。
2821/04/12(月)04:06:08No.792043474そうだねx1
「ねえトレーナーちゃん、温泉すっごくよかったね」
「ええ、そうね」
「ねえ、トレーナーちゃん」
「なあに、マヤ……」
 突然、だった。
 ぴん、と私の身体に張り詰める緊張。抱き寄せた手とは違う手が私の浴衣を乱暴にはだけさせていく。いや、やめて。そんな言葉は塞がれている唇からは出ない。私のともすれば子供っぽい飾り気のないブラとパンツが、マヤノにも分かるぐらいにはっきりと二人のもとに晒されると同時、振り向き様に重なった唇が唾液の糸を引いて離れていく。帯の緩んだ浴衣が熱を帯びているように感じる。荒く息を吐きながらマヤノの方を窺えば、彼女もまた自らの手で浴衣の帯をほどき、私と同じ姿へと変わっていた。
2921/04/12(月)04:06:54No.792043519そうだねx1
「トレーナーは、もう私のトレーナーじゃなくなるんだよね。だったらここからはもう私が好きなこと、するね」
「マヤ、やめて……」
「トレーナーが知ってるマヤノトップガンはトゥインクルシリーズでおしまいだったんだよ。だから、もう、マヤじゃないもん」
 くるん、と指先が臍の縁をなぞる。私の口から短く漏れた声は明らかに艶めいていて、私が何者であったかを分からなくさせる。
「もっと、もっと戻れなくしてあげるね」
 マヤノのキスが私の全身を優しくついばむ。彼女が身につけた白いレースのブラとパンツは私のそれよりも随分と大人びていて、私は……私の犯した罪を苛むことしか、この夜も出来なかった。
3021/04/12(月)04:11:32No.792043773そうだねx1
>こういう退廃的な怪文書はとても好みなので次の機会があれば書いていただきたいです
わーいありがとー!
ちょっとトレーナーちゃんヘナヘナにしすぎたけど機会があったらマックかライアンでなんか書くよー次はベタ甘ネイチャになるけど!
3121/04/12(月)04:12:21No.792043813そうだねx5
>ベタ甘ネイチャ
私の性癖に合ってますね
3221/04/12(月)04:37:14No.792045087+
私はマヤノトレーナーチャン(♂)ですがこういうのもいいですね!
3321/04/12(月)04:56:16No.792045844+
女トレーナーでプレイしてるから余計に楽しんで読んだよ
ありがたい…
3421/04/12(月)04:59:50No.792045970+
太陽に心臓を捧げる儀式
3521/04/12(月)05:41:20No.792047489そうだねx2
読んでくれて本当にありがとね〜
マヤちんハッピーな世界にテイクオーフするから、「」のみんなまたね〜
3621/04/12(月)06:04:00No.792048418+
私の性癖には合っていますよ


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