やだ。
「否定ｶﾞﾒﾁｬｸﾁｬﾊﾔｲｰ!?」
こいつが変なことを言い出す時はたいていロクな目に遭わない。そう、ゴールドシップがゲート入りを嫌がると出遅れるってくらい確実だ。
「違くて！ボクに休み出してもトレーナーは仕事するでしょ！？ボクのことで！」するなあ、それはとてもする。
大体が専属トレーナーという生き物は寝ても覚めても担当ウマ娘のことだけ考えて生きているものだ。

こうしてテイオーのわがままを聞き流しつつも頭の中はこいつにとって最適なトレーニングメニューのことでいっぱいで「だからさ！！」へぁ？
「休みが必要なのはボクよりトレーナーだって言ってんの！未来ばっか見てふわふわしちゃってさ！人のことあんまり言えないけど！」
そうだな、お前に足元がお留守とか一番言われたくな「はー！皮肉で混ぜっかえすの禁止ー！」禁止されてしまった。帝王の命令には従わねば。
「お休みは嬉しいけどボクだけリフレッシュしても意味ないの！トレーナーもボクのこと忘れて頭の中すっきりしてくれなくちゃ！」
なるほど納得できる。しかしテイオーのことを忘れるために一日テイオーに付き合えとはこれ如何に？
「ﾌﾌｰﾝ!!このテイオー様がキミに仕事のこともなにもかも忘れられる楽しいひとときをプレゼントしてあげましょう！そう言っているのだよ！」
うわーい。絶対ロクなもんじゃねえー。
「ﾓｯﾄﾖﾛｺﾝﾃﾞﾖｰ!?」
テイオーがなにやら素っ頓狂な声を上げているが、その気持ちは嬉しくもありがたい。ここはひとつお誘いに乗っかるのも一興だろう。そう思った。

「二人でいろんなところに行ったね」あぁ。ニンジン農家さんに山ほどにんじん分けてもらったな。
「正月の福引のときくらいあったよねー。どうしよっか」あのときのにんじんと一緒で気づけばなくなってるさ。
「にんじんはおいしいもんねー……そうそう、洞窟にも寄ったよね」まさかダイヤの鉱脈があったとはな。
「ボクらが掘ったら簡単に枯渇しちゃったけどね。でもいい思い出でしょ？」あぁ。思いがけない幸運に打ち震えた。

「釣りもしたよね。トレーナーったら引き上げるタイミングぜんぜんヘタで」釣りって魚を釣るもののはずなのに、我ながらヘンなものばっかかかったな。
「……リフレッシュできた？」テイオーはどうだ？
「もー！ボクのことより今はキミのことー！」……まぁ、いい気分転換にはなった……と言うか。
「んー？なんか歯切れが悪いなー？このテイオー様ははっきりしたおへんじを望んでおるのだがー？」……はい、楽しかったです。
「ﾝﾌｰ♪そーかそーか！ワガハイはその言葉を聞けていたく満足であるぞー！」……それはよろしゅうございました。
「じゃあさじゃあさ、今度のおやすみもトレーナーボクと」『テイオーちゃーん、もうお風呂の時間終わるよー？』
テイオーがなにか言いかけた瞬間、唐突に交じる声。これは……マヤノトップガン！？

「ｴｰｳｿｰ?ボクの中ではまだお昼なんだけどー？」
『マヤもトレーナーちゃんとおはなししてると時間の感覚わからなくなるけど、現実とは戦うべきだと思うな』
意外と現実的なところあるんだな、トップガン。
「やーだー！もっとトレーナーとゲームするのぉー！！」そう、ゲームだ。今日は一日使ってテイオーのゲームに付き合わされていた。
マルゼンスキー風に言えばナウなヤングにバカウケの…あの「四角い世界でいろいろ作れるゲーム」に。
もっともスイスイ先導してくれるテイオーのうしろについていくだけのプレイではあったが。

ボイスチャットを介して伝わるテイオーの声は終始楽しげに弾んでおり、昼食時ですら「あとで食べるからいいよ！」と言ってのけていた。
食べることも忘れてゲームにのめり込むのは休息と言えるのか？という思いがないわけではなかったが、
なにしろテイオーは楽しそうだし、俺自身ボイチャを介して誰かとわいわい騒ぎながらゲームをする、という未経験の体験に胸躍っていたのは事実だ。
つまるところ、テイオーの心の休息の一助になれたのであれば──
『もー！さっさとお風呂はいらないとヒシアマさん怒るよー！？』「ﾜｶｯﾃﾙﾖｰ!!」
──ゲームで回復した心の体力、すぐに現実に刈り取られそうだな……現実はつらいよなテイオー……わかるよ……
「トレーナー！それじゃボクお風呂入ってくるからまたね！」あぁ、お疲れ。
「「またやろうね（な）！」」
……一言一句違わずハモってしまった。

「〜〜〜〜〜〜っっ♡♡♡」ボイチャの向こうでテイオーがすっごい息飲んでるのがわかる。嬉しいよな。俺も嬉しい。言わんけど。
「約束したからね！絶対だよ！ウソついたらゴルシけしかけるから！」お前はゴールドシップをなんだと思ってるんだ。
「それじゃね！マヤノもうお風呂済んだ！？」『もー！マヤはテイオーちゃん待ってたのー！』「あははｺﾞﾒﾝﾈｰ!!」
テイオー、ボイチャは切って行け。「おっとそうだった。おやすみトレーナー、また明日！」
……とても雑にボイチャを切られ、私室に一人となった。
脳の隅に追いやられていた空腹感が水を得たように暴れだし、耐えかねてゴルシちゃん焼きそば（カップ）に熱湯を注ぐ。
テイオーを休ませている間に片付けようと思っていた仕事はまるっと手つかずで残ってしまったが、まぁいいだろう。

担当ウマ娘が楽しく日々を過ごしている。それに優るものなどないし、そのためなら仕事なんか放り捨ててしまえばいい。
「いいこと言うなァテイオーのトレーナー！アタシのトレーナーにも聞かせてやりてぇぜ！」
お前のトレーナーはよくやっているだろうゴールドシップ。あとどっから入ってきた帰れ。「はいよー」
ゴールドシップが仕上げてくれたゴルシちゃん焼きそば（カップ）を啜りながら、これからのテイオーの育成方針に思いを馳せる。
……詮無い考えだな、と苦笑が漏れた。
つまるところ「テイオーがテイオーらしく日々を笑顔で過ごせること」こそが自分の仕事であり、レースはそのためのいち要素に過ぎないのだ。
彼女がかの『皇帝』を越えたいと望むなら、それを手助けするのが仕事であり、彼女が一緒にゲームしたいと言うなら付き合うのが仕事だ。
デスクワークより、世間的な実績より、そのほうがよっぽど重要なのではないか。ゴルシちゃん焼きそば（カップ）の味もそう言っているようだ。

「おはよートレーナー……いやぁあの後ふたりのセーフハウスのデザインが気に入らなくていろいろ手直ししててさ……」
[夜更かし気味]
テイオー、しばらくゲーム禁止。ヒシアマゾンに見張ってもらうよう頼んでおくから。「ﾒﾁｬｸﾁｬﾋﾄﾞｲｰ!?」

本文が長すぎますっ！なんて警告が出るのはじめて見た
なんかこう、湿気ったり澱んだりしてないただのガキなテイオーが見たかったので自給自足しました
わりとそれだけなのです

ゴルシちゃん焼きそばカップ麺になってんのかよ…

ほっこりした
こういうネタ大好き
幸せになれ

この距離感良い

テイオーと何気ない会話を延々としたい

>ゴルシちゃん焼きそばカップ麺になってんのかよ…
残り一分ぐらいでお湯抜いてレンチンすると焼いたようなモッチモチになるんだぜ！
あ、でもフタの銀紙は綺麗に取り除けよ？火ぃ吹くぞ！

>なんかこう、湿気ったり澱んだりしてないただのガキなテイオーが見たかったので自給自足しました
年相応に健全なテイオー怪文書は疲労回復によいのでもっとやれ

>「んー？なんか歯切れが悪いなー？このテイオー様ははっきりしたおへんじを望んでおるのだがー？」
ここめっちゃ可愛い

ハモったら嬉しそうにするテイオー可愛い

テイオーと健全に遊んでいたい

健全なテイオーは胃に優しい

テイオーにゲームで勝ってムキになってくるのでも良いし負けて得意気にされるのでもいい