「ターボ、カノープスに入りたいの！」
「ええと、君は……」
「ツインターボ！　ここネイチャがいるんでしょ？
だったらターボも入る！　トウカイテイオーを蹴散らしてやるんだ！」
「なるほど。ではターボさん、よろしくお願いします」
「え、いいの？」
こてんと首を傾げるターボに合わせるみたく、
トレーナーも首を傾げる。
「入りたいのでしょう？」
「ホントにホントに入っていいの？」
「ええ、もちろんです。ようこそ、カノープスへ。ターボさん」
……断られるかな、とちょっと思っていた。
ターボはもう、三つくらいチームに断られていた。

ターボはもう、三つくらいチームに断られていた。
「あなたはきっと合わない」
そんなよく分からない、断りの言葉一つで。
なのにこのトレーナーは、あっさりとターボを入れてくれた。
トレーナーは、魔法使いみたいだとターボは思う。

「でもさ、トレーナー大丈夫かな？」
ネイチャがそう呟くと、
部室の雰囲気が一気に暗いものになった。
「え？　大丈夫って何が？」
「ほら。トレーナーさん、例のテイオーイベントの件で、
生徒会に呼び出されてるかしら」
「呼び出される？　なんで？」
テイオーは復帰を約束して、ターボに謝った。
悪いことなんか、一つもないのに。

「下手をすると引退ライブを台無しにしていましたからね。
何かしらの責任を取らなくてはいけないかも……」
「えー、どうしてどうして！？
トレーナー、全然悪くないじゃん！」
ターボの言葉にネイチャは首を横に振る。
「私もそう思うけどさ。
大人の世界って、そういうもんなのよ」
「……最悪。辞職という可能性も……」
「じしょく？」
「トレセン、辞めるってこと」
目の前が、真っ暗になった。

「なんとかしてトレーナー！」
ターボがそう叫んだせいで、
「……分かりました。ではこうしましょう」
トレーナーが責任を取らなくてはいけないの？
「ダメダメダメ！　トレーナーが悪いんじゃないもん！
悪いのはターボなんだから！」
「そうは言っても……ターボ？」
「生徒会に行ってくる！！」
「「「……はい！？」」」
ターボは走り出した。

「――では、心当たりはないということで？」
「はい。まったく、全然、これっぽっちも」
カノープストレーナーのすっとぼけに、
エアグルーヴは頭痛を堪えたように眉間を揉んだ。
が、トレーナーは全力ですっとぼけている。
「一歩間違えれば、テイオーのライブが台無しだったのですが」
「盛り上がって何よりです」
「責任を取る気はないと？」
「自分がやった訳ではないので」
ここまですっとぼけるとある意味凄いな、と
エアグルーヴは感嘆した。
メイショウドトウの証言と目撃者証言から、
犯人はカノープスであることが明らかである。
というかツインターボのオールカマー戦を
中継させた時点で有罪ほぼ確定である。

結局、ライブが盛り上がったこともあって
ライブジャックは有耶無耶になっていた。
「会長。採決を」
トレセン学園生徒会長シンボリルドルフは、困ったように笑った。
「まずは感謝を」
「いやあ、感謝される心当たりは全くないですね」
「ははは。そうですね、そういうことにしておきますか」
エアグルーヴはまあ、仕方ないかとため息をつく。
あの中継のお陰でテイオーが引退撤回をしてくれた以上、
彼の行為は違法ではあっても正しかった。
「南坂トレーナー、一つだけ質問いいでしょうか？」
「どうぞ」
「ツインターボが負けると思わなかったのですか？」
その質問と同時、青い珍獣が転がり込んできた。

走る、走る、脇目も振らずに走る。
トレーナーなんて誰でもいいとカノープスに入るまでは、
そう思っていた。
どうせ自分は、全力で走るだけなのだから。
けれど、トレーナーは困ったように笑いつつも、
ターボが勝てる可能性のあるレースを教えてくれた。
まあ、それでも負けたり勝ったり負けたり負けたりだったけれど。
それでもターボを信じてくれた。
ターボが諦めないなら、自分もそれを信じると。
ターボは頭悪いけれど、とてもとてもバカだけど。
分かることくらいある。
トレーナーはターボのためにがんばってくれたのだ。
だから！

「トレーナー悪くないもん！　ターボが悪いの！
ターボが悪いんだから！！」
「ターボさん！？」
「ツインターボ……！」
とりあえずこれで手打ちかと思った瞬間、
ツインターボが泣き喚きながら生徒会室に乱入した。
ギャン泣き状態の彼女を前に、
さすがに一同も茫然自失のていである。
「ターボさん」
「トレーナーじゃなくてターボが……ふえ？」
「大丈夫ですから」
トレーナーが倒れたツインターボをひょいと持ち上げ、
彼女を立たせた。
そして軽くデコピン。

彼女を立たせた。
そして軽くデコピン。
「むぎゃ」
「部屋に入るときは、ちゃんとノックですよ」
「ふぁい……」
結構痛かったのか、ツインターボは涙目で額を押さえた。
「……くっ……ぷっ……」
「会長……あのですね……会長っ……くっ……ふふっ……」
そして会長と副会長は、あまりといえばあまりの
タイミングの悪さに、笑いを堪えきれなかった。
「……失礼。どうやら今のが決定的な自白というものでしょうか？」
シンボリルドルフの言葉に、トレーナーは肩を落とす。
「ですかねー……」
「今回は厳重注意ということで。もう行っていいですよ」

「げんじゅーちゅーい？」
ツインターボがこてんと首を傾げる。
その襟首を掴んで、彼女を小脇に抱えるとトレーナーはそそくさと二人から背を向けた。
「いいチームですね、カノープス」
が、シンボリルドルフの言葉に足を止めて振り返る。
「でしょう？」
誇らしげに、トレーナーは笑った。

「トレーナー、大丈夫なの？」
「大丈夫ですよ」
さすがに事態をむしろ悪化させかけたとは言えず、困ったようにトレーナーは笑う。
「ホントのホントのホントに？」
「本当です」
「そっかー、よかった！　ターボのおかげ？」
「ええ、ターボさんのお陰です」
「やったー！　それじゃ今度テイオーと一緒のレースに出して！」
「えーと……それはまた今度に」
「じゃあじゃあ。えーと……」
ふと思いついた。
トレーナーにして欲しいこと、トレーナーが叶えてくれそうな願い。
そう、確か……確か、ええと、ちゃんとした言葉があったはずだ。
キラキラと輝くような、ウマ娘の胸が弾むような、そんなステキな言葉が。

あ、思い出した。
「じゃあさぁトレーナー、今度ターボと――」
デートしようよ！
さすがのトレーナーも盛大にスッ転んだ。

そして後日。ターボに誘われたカノープス一同は、休日の買い物としゃれ込むのであった。
「デート楽しいね、みんな！」
その言葉に、カノープスの面々も相好を崩すのであった。

「それが新郎新婦の最初のデートとなったのであります」
マチカネタンホイザがそう言うと、
一同マジかよという表情で主賓の二人を眺めた。

愛も恋も、いつからどこから始まるかなど
誰にも分かりはしないのだ。

怪文書むつかしいね…

いい…

ｷﾃﾙ…

逃げ切ってる…

>走る、走る、脇目も振らずに走る。
>トレーナーなんて誰でもいいとカノープスに入るまでは、
>そう思っていた。
ここバンプの歌詞みたいで好き

アンタが相手ならターボを任せられるわって謎の父親目線になる

逃げて刺したな…

ちょっと泣く

私これ好き！

拍手を

>>走る、走る、脇目も振らずに走る。
>>トレーナーなんて誰でもいいとカノープスに入るまでは、
>>そう思っていた。
>ここバンプの歌詞みたいで好き
電車で笑っちゃったじゃん！

埋めてやった

ターボいいよね…

コイツらうまぴょいするんだ…

古川ボイスが凄いしっくりくる

捕虜の証言以外に証拠らしい証拠残さなかったのヤバくね？

いいオチだな…

こういうのめっちゃ好きぃ…と思ったら結婚しとる！！！

>捕虜の証言以外に証拠らしい証拠残さなかったのヤバくね？
あの…目撃証言…

コロッと転がすオチが読後感良くて好き
上手ってこういうのを言うのかな

>あの…目撃証言…
限りなく黒に近いけど確定情報がない
疑わしきは罰せずなんだ

>怪文書むつかしいね…
とても良かったから次も期待してるぞ！

指紋とか匂いとか物的証拠は一切残してないんだろうな…
ターボが自白しなかったら真相は闇の中だった

「」一堂マジかよという顔で文章終わりの数行を眺めた。

泣いてくる

>怪文書むつかしいね…
次も期待しています

ターボ幸せにおなり...
そのまま死ぬまで笑顔で大逃げするんだよ...

セックスしたのか…？ツインターボと…

あんなマスクをしたウマ娘とトレーナーがトレセンにいますか？
いませんよね

あの勝負服のケツを…

タボポカは健康にいいぞ

まだカノープスメンバーと結婚したのは間違いないだけだし…ターボとは限らないし…

カノープスのトレーナーならまぁ幸せにしてくれるってわかるわ
他のメンバー相手でも上手くやれそうだし

歳の差やらなんやら障害あってもターボはきっと諦めないよね…