二次元裏@ふたば

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216055 B21/03/22(月)22:09:40No.785939080そうだねx3 23:10頃消えます
ある昼下がり、アグネスタキオンが図書室で科学雑誌の最新号を読んでいると、ドスドスと近づいてくる気配がした。変人科学者として名高いタキオンのところへ好き好んでやってくるウマ娘はそう多くない。その中で、こんな豪放磊落な気配の持ち主といえば。
「おや、珍しいねゴールドシップ」
「よーぉタキオン、今日もイグノーベル賞目指して頑張ってんな!」
タキオンと同等、いやそれ以上の問題ウマ娘、ゴールドシップである。
よっこらセントウルステークス、と謎の掛け声を発しながら、何の断りもなく真正面に陣取ってくるゴールドシップ。
「やれやれ、私が目指すのはウマ娘の限界を――ん?」
溜息をついて視線を誌面に落としたタキオンは、ふと違和感を覚える。普通なら、席に着くなり意味不明な話を始める(そもそもおとなしく着席すること自体珍しい)はずのゴールドシップが、やけに静かだ。顔を上げると、
「……」
そこには頬杖をついてアンニュイな表情を浮かべている謎の美女がいた。いや、ゴールドシップだ。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
121/03/22(月)22:12:01No.785939878+
「おいおいおい、どうしたんだいゴールドシップ。やけに元気がないじゃないか」
「……」
「体調不良なのかい? なら丁度いい、先日調合した新しい栄養ドリンクが」
「栄養なら野菜350gぶんはあるから無問題アルヨ」
「そこは即答なんだね」
しばしの沈黙。ゴールドシップはただ黙っているというより、何かを言いよどんでいるようにさえ感じられる。これは本当に何かあったのか、とタキオンが目を眇めた時だった。
「なーんか、余ってんだよな」
ようやくゴールドシップが口を開いた。「余っている、とは?」
全く意味が取れないので、タキオンは聞き返す。
「圧力鍋が沸騰してガッタガッタ揺れてる時みたいな……違うな、遠くで光った雷がゴロゴロドカーンって鳴らす音を待ってる時みたいな……そんな余り方してんだよ」
すまない、ますますわからない。と言いたくなるのを研究者根性でこらえ、タキオンはさらなる対話を試みる。
「まず主語を話したまえ。一体何が余ってるんだい?」
「何ってお前……パトスに決まってんだろ」
「ふぅン? pathos、ねえ」
221/03/22(月)22:12:49No.785940175+
当然のように言い放つゴールドシップに、タキオンは少し身を乗り出した。情動、情熱、情念――激しい感情。それは彼女が最近研究対象としているテーマでもある。俄然興味が湧いてきた。
「傍目には、君はいつだって思いのままに動いているように見えるけれど。それでも持て余すほどの感情が、君の中にはあると?」
「んー、なんつーかなぁ……」
タキオンが問うと、ゴールドシップはぐんにゃりと首をひねった。いや曲がりすぎだろ、と内心引き気味のタキオンにはまるで気づかず、ゴールドシップは考えながら言葉を続ける。
「この前あいつ――あー、アタシのトレーナーな? あいつ連れて山行ったんだよ山。ヘビとかイノシシとか出て超!エキサイティン!!だったわ」
「君のトレーナーの苦労が偲ばれるよ」
「そんで頂上着いたら、あいつムチャクチャいい顔で笑ったんだよ。『ゴールドシップはいつも見たことのない景色を見せてくれるね、ありがとう』って。そしたら何か……余った」
「……ほーぅ?」
釈然としない顔のままのゴールドシップ。一方、彼女の様子を見たタキオンの脳内では、一つの仮説が生成されようとしていた。
321/03/22(月)22:14:11No.785940679+
「その時はあいつを背負って下り坂イッキしたら割り切れたんだけどよぉ、それからちょくちょく余りが出るようになったんだよなー」
「ほうほう、具体的にはどんな場面で?」
「そーだなぁ。外周走ってる時、あいつの方見たら全然こっち見てなくて、こっち見てねえなあ、って思ったら余ってたり、イナゴとイカナゴの佃煮食べ比べしてる時、あーあいつにも食わせてやりてえなあ、って思ったら余ってたり、なーんかスッキリしねえんだよ。なあお前、どんな素数も割り切れるようになる秘密道具とかねえの?」
「ふぅン。秘密道具は、ないけどねえ……」
タキオンの中で、仮説の確度がどんどん上がっていく。それも、なかなかに面白い仮説だ。じっくりと検証するのも楽しそうだが、タキオンの好奇心は即効性のある実験を選択した。
「ゴールドシップ。君の話をまとめると、君はトレーナーと接触したり、トレーナーのことを想起したりすることで、パトスの『余り』――心に収まりきらないほどの情動を抱えていることになる」
421/03/22(月)22:16:43No.785941551+
「んぁ? そうなのか?」
「そうとも。しかもそれは、君のトレーナーという特定の個人をトリガーに発生している。特定の個人に対して強い情動をもつ理由はいくつかあるが、状況を総合的に勘案して最も妥当と思われるのは――」
「……ごくり」
息を呑む擬音語を口にするゴールドシップ。いまいち緊張感に欠けているが、タキオンは構わず次の言葉を告げた。
「恋だよ。ゴールドシップ、君はトレーナーに恋愛感情を抱いているのではないかな?」
「!」
ゴールドシップの目が真ん丸になり、それを見たタキオンの口角はにんまりと上がる。実際のところ、仮説は仮説でしかない。それをあえて直接ぶつけることで、引き出された反応から考察を深める――それがタキオンの実験だ。否定か、動揺か。次なる反応をワクワクしながら待っていたタキオンだったが。
「……」
ゴールドシップは数十秒経ってもそのままだった。完全に固まっている。瞬きすらしていない。
「……おーい? ゴールドシップくーん?」
「……ハッ!」
戸惑い気味のタキオンに目の前で手をひらひらされて、ようやくゴールドシップは我に返ったようだった。
521/03/22(月)22:18:05No.785942078+
「悪ぃ悪ぃ、ちょっとゴルシ星に弾丸帰省してたわ」
「おかえり。それで、私の提示した推論について、君自身はどう考える?」
タキオンは容赦なくズバリと切り込む。彼女の探るような眼差しに対して、ゴールドシップは、
「やっべ、すっげえワクワクしてきた!!」
勢いよく立ち上がると、心底楽しそうに笑った。
「わ、ワクワク?」
いささか予想外の反応に、わずかにたじろぐタキオン。ゴールドシップはそんな様子を気にも留めず、拳をぐっと固める。
「来い! 濃い! 故意! ままならねえ世の中でも特にままならねえと評判のパッション! それを華麗に乗りこなしていくのがゴルシちゃんのミッション!! うおおお、燃えてきたぜ!!」
「ちょ、ここ一応図書室……」
今更のようにたしなめてみるタキオンだが、完全に通常運転に戻ってしまったゴールドシップにはもちろん聞こえていない。
621/03/22(月)22:18:56No.785942420+
「よっしゃあ、そうと決まれば景気づけに鯉のぼり上げに行くぞ! タキオン、おめーも来るか?」
「……いや、私は遠慮しておくよ。まとめるべきレポートもできたしね」
タキオンの観測範囲(その多くはメジロライアンから借りた少女漫画だ)では、恋愛感情を指摘されてゴールドシップのような反応を示す例はなかった。貴重な事例として記録しておきたい。
「そっか、んじゃ行くわ。レポートがんばれよ! あと……」
「ん?」
駆け出しかけていたゴールドシップが、ふと振り向いてタキオンを見る。そして、
「サンキューな!」
少しだけはにかんだような笑顔で言い残すと、今度こそ走り去っていった。
「……やれやれ。私はパンドラの箱を開けてしまったのかな?」
ゴールドシップのトレーナーがこれから受けるであろう様々な受難を想像して、タキオンは小さく笑った。
721/03/22(月)22:25:26No.785944776+
スレ画が別の怪文書とかぶってしまってすまない
821/03/22(月)22:26:29No.785945173+
ゴルシ怪文書が二つ…
来るぞトレピッピ!!!
921/03/22(月)22:29:58No.785946351そうだねx2
夢女子が失神しちゃう!
1021/03/22(月)22:43:55No.785950939そうだねx1
ゴルシが恋するところがなかなか想像つかない
1121/03/22(月)22:48:13No.785952347そうだねx4
めちゃくちゃ乙女じゃん…
1221/03/22(月)22:51:35No.785953558+
うおーファイヤー!!
1321/03/22(月)22:56:30No.785955259+
黄金時代きてんじゃん…ゴールドシップだけに
1421/03/22(月)22:58:00No.785955755+
ゴルシが恋をしたっていいんだ…
1521/03/22(月)22:59:35No.785956246+
うわ…このゴルシ好き…
1621/03/22(月)23:01:31No.785956945そうだねx3
>「この前あいつ――あー、アタシのトレーナーな? あいつ連れて山行ったんだよ山。ヘビとかイノシシとか出て超!エキサイティン!!だったわ」
>「君のトレーナーの苦労が偲ばれるよ」
いお
うま


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