音が少しずつ遠ざかっていく。ぽた、ぽた、ぽた、と雫をいくつも残していきながら。 そしてそれに少し遅れて、どぽり、と堰を切ったように粘着質な液体が溢れだす。 びちゃびちゃと跳ねて生まれた足下の白い塊は、その嵩をゆっくりと減らしながら、 女の尻の直下に、子宮内に充填されていた液体と同体積の泉を作るのである。 勢いがなくなっても、そのねっとりと粘つく液体は一瀑の滝のように連なって降り、 彼女の下半身がびくびく震えるのに合わせて、途切れそうなぎりぎりの細さになりつつ、 乳房の下側にもぴちゃぴちゃと飛沫を打ち付けながら、先に出た仲間と合流していく。 腰の揺れ、膝のがくつき、全身の細かな震え――その一切を見る限り、 彼女がほんの一瞬前まで、筆舌に尽くしがたい刺激の泥沼に溺れていたのは明白だった。 だがその疲労の抜け切らないうちに、女の身体はまたびぃん、と強く波打つ。 声は肉色の壁の中に埋もれて聞こえない。ちょうど首から下だけが出た格好だ。 滑稽なのは、その尻側が上になって逆立ちのなり損ないのような体勢であることで、 もちろん、それは彼女の本意ではない――否、それ以外の体勢を取れないのだ。 首から上をがっしりと赤黒い肉の生垣の中に飲み込まれて固定されているだけでなく、 びりびりと引き裂かれた青い肌着の下から覗く白い肌のあちこちには、同じ肉の蔦が絡む。 物理的に脱出が不可能な状態、完全に逃げ場を失った状態で嬲りものとなってから、 既に数週は経過していよう。まだ抵抗の意思を見せているのは、流石といったところか。 それを、宇宙最強だとか何だとかの称号にのぼせ上がった結果と見ることもできようが。 狭い隙間を意図的に作り出して小型の獲物を誘い込み、中で捕殺するこの生物の巣に、 彼女が自ら入り込んだのも、原生生物の調査というありふれた依頼をこなすためだ。 しかし彼女の肉体は、その途中でつっかえてしまった。大きな乳房と尻が邪魔をした。 もたついている間に、件の生物は愚かな獲物をがっちりと捕らえて――今に至る。 肉の壁の向こう側からも、その絞り出された悲痛な声は幽かに聞こえてくる。 足先をじたばたとさせて、必死に与えられる刺激に耐えようとしているようである。 それも無理はなかった。膣口にこそ、何も突き立てられてはいないが、 尻穴にはその太さとほとんど同径の太い一本が容赦なくねじ込まれて脈動している。 それは色といい形といい、彼女の内臓を想わせるものだった――事実、 女を捕らえた触手のうちの一本と彼女の腸壁はほとんど癒着して一体化しており、 触手がぐぐっと引っ張られると、内臓ごと掻き上げられるような信号が走るのだ。 そしてその管によって、自分は今生かされている――必要な栄養分を与えられて。なぜ? その答えを彼女は知っている。背後にまた現れたものの気配に、より激しく抵抗を見せる。 けれども、所詮無駄な足掻きだ。物理的に抑え込まれ、内臓ごと吊り上げられては、 尻を左右に多少振ってみせるのが精一杯である。何より、尻の吊られた位置は高くて、 すらりとした長い脚を持ってさえ、常につま先立ちをしていなければならぬのだ。 だらんと膝を伸ばしてしまえばいくらか楽だろうが――それは屈することに等しい。 “それ”は何度もそうしてきたように、その先端を彼女の膣口にあてがって、貫く。 ごりごり、みちみち、と内側を圧しながらあっさりと子宮口へと到達して、 先程と同じように、思いっきり、彼女の子宮内に生臭い白い泥を流し込んでいく。 やはり声はくぐもって聞き取り辛いが、それは明らかに嬌声であり、 彼女が肉体的にはもはや抵抗する術を失っていることがはっきりとしていた。 子供の頭より大きな乳房は、服の中にぎっちりと押し込んであった分にはよいのだが、 こうして不自由な体勢でそこだけ布地を破り取られて露出してしまっていると、 その重量がそのまま、彼女の身体を下側へと引き下げる重りとして働くようになる。 拘束されてから己の身体を見る機会がなかったために本人さえも気付くことはないが、 両乳房はこうしてひたすら種付けを受けるようになってから、少しずつ大きくなっていた。 哺乳類――地球人種として生を受けた彼女の肉体は、そこに与えられる性的刺激によって、 それに反応する形で、生来の雌としての才能を開花させていったのである。 餌となる動物にしては大きすぎる。しかし自らそんな隙間に入り込む生物はあまりない。 そうすると必然的に、この動物は彼女を同種の、繁殖期に合わせて寄ってきた別個体だ、 と考えるようになる。そんな不幸な“勘違い”は、交尾の目的の不成立、 仔の生ることのない無為な絡み合いの間に一方が衰弱死して解消されるのだが―― 生憎と彼女の肉体は、数多の生物の遺伝子を積み込まれた他に類を見ない奇跡の産物だ。 同種の地球人種のみならず――最初に組み込まれた鳥人族との交配もでき、 またあるいは、彼らの作った生物兵器だとか――それを天敵とする生物だとか――云々。 精を受ければ、種を問わずそれを無理なく孕んでしまう肉体であることに、 彼女はどれだけ自覚的であったろう?そんな大きな乳房と尻とを衆目に晒しながら。 だからこうして、どろどろと濃いものが膣口からねぱぁと垂れ落ちてくるその感覚は、 下等な生物に犯されている、という異常の恐怖感と嫌悪感を彼女にもたらすのだ。 まさか――と、考える暇もなく、また次の性器が種を付けるために尻の前にぶら下がる。 首から下の重さに、女は何度も呻き声をあげた。自分のものではないかのようだ。 見えない、ということは存在しない、ということではない――それもわかっている。 だからこそ、自分の身体が半年経った今、どうなっているのか想像するのが怖い。 更に大きさを増した乳房は、ふと油断すれば膝が当たってしまいそうなぐらい邪魔で、 何度も爪先で肥大化し黒ずんだ乳首を踏みつけてしまっては、その感覚に声が漏れる。 噴き出るのは苦悶の声だけでなく、その乳房の中にいっぱいに詰まった乳汁もそうだ。 ぶびり、ぶびゅりと圧をかけるたびに先端からは幾筋か白い橋が宙に掛かる。 当然それらは、彼女の胎内の仔のために、せっせと蓄えられたものなのだ。 腹部は乳房よりもさらに大きくなり、爪先立ちでも臍が床に届いてしまうぐらいである。 かといって脚で腹部の重量に抗うことをやめてしまっては、その体重が全て、 乳房と接している箇所にぐうっとのしかかって来るため、耐えられるものではない。 腹部の重さによって自然に乳房が押し潰されて、母乳を思いっきり吐き出させられるのだ。 そのたびに頭が真っ白になるほどの快楽が彼女を襲い、膝はさらにがくがく震える。 こんな冗談のような身体が出来上がっていて――勝手に乳汁を垂れ流して絶頂し、 自分に耐え難い刺激を叩きつけてくるのだから、彼女の苦悩はいかばかりか? “子”が胎内で激しく動いて、腹部が波打つと、それでまた乳房に力が掛かる。 種付けを済ませたはずの触手は我が子のいる子宮内部にまで入り込んできて、 直に“栄養”を与える――その給餌のための交尾の刺激もまた、耐え難い。 彼女はただ、解放される瞬間だけを待ち望んでいた――それがどんな形であろうと。 どくん、どくんと大きく蠢いた胎の“中身”はいよいよその時を迎えたと見えて、 彼女に何の合図も与えず、一気にぶりゅりゅ、と腸詰のように噴き出してくる。 絶叫――言葉にならない――いつ終わるともしれない――声が、壁の向こうに響く。 黒ずんだ陰唇には、種付けに参加した何本もの触手が集まって“出口”を開けてやって、 その開いた隙間から、何本も何本も、臍の緒をつけたままの肉塊が飛び出しては、 彼女の尻の下の白い泉を産湯代わりに、ごろごろと転がりながら生を謳歌していた。 後から後から、いつ終わるともしれぬ肉の鎖が延々と産道を通過していく。 既に彼女の意識はない。出産による痛みと膣壁への刺激とに脳が耐えられなかったのだ。 乳首に興味を持ち、舐り始めた個体は――“これ”は自分たちのものだ、と本能的に理解した。 それからも彼女のすることは変わらない。尻を上げたまま固定され、種付けされては産む。 ただそこに、乳房を舐られるのが追加されただけだ――無数の“赤子”たちによって。 彼女からは姿すら見えぬ、けれど確かに己の血を引いた我が子らによって。